motzの雑記帳

主にBMS関連の話題について不定期に語ります

無名戦17&A-1 10thを統計データから振り返る

1.はじめに

第17回自称無名BMS作家が物申す! & A-1 CLIMAX 10TH - LIKE A SHINING DIAMOND -の開催期間が終わってから2週間が経ち、今はMutual Faith 3が絶賛開催中、また、3週間後にはWORLD WAR - BATTLE ROYALE IN ALL REGIONS イベントもはじまる予定であり、BMS界隈に関わっている方々はMutual Faith 3のインプレや、作者の方々はWORLD WARイベント向けのBMS制作等を頑張っている頃だと思います。今年はその後さらにBOFXVIやBMS衆議院選が控えていたり、それ以外にも様々な小規模イベントも企画・計画されていたり等もあり、無名戦A-1を振り返るならタイミング的に今しておいた方が良い、ということで、今回、振り返り記事を執筆したいと思います。
今回は、mots同様無名戦に参加していたEnteさん (https://entenoblog.hatenablog.com/)にまとめて頂けた無名戦・A-1の統計データを用いて、客観的な目線で振り返りと考察を行っていきたいと思います。振り返り内容については、場合によってはEnteさんのものと重複するところはあるかもしれませんが、ご容赦ください。

2.統計データ

Enteさんがまとめたものに自身が確認したい切り口でいろいろなビューを追加しました。かなりたくさんのシートを追加しており、この記事で触れないデータもあると思うので、興味のある方は確認頂けると色々とご自身で考察ができるかもしれません。

https://drive.google.com/file/d/1mmSzi9Hj0XIqgpwWpruSlDSj_csB2JHF/view?usp=sharing


3.振り返り考察

ここから考察をはじめていきます。それぞれの切り口ごとにまとめていきたいと思います。

1. 全体インプレ数・得点発生記録から見る振り返り

まずは無名戦・A-1全体のインプレおよび得点発生記録です。

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無名戦・A-1 インプレ発生推移
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無名戦・A-1 得点発生推移

データを見るまでもなくわかっていたことですが、無名戦・A-1ともに最終日にインプレが集中しています。もう少し細かくデータを見ると、無名戦・A-1ともに、最終日の得点・インプレ数は全体の総得点数・インプレ数の3割以上を占めています。

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無名戦・A-1 最終日得点割合
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無名戦・A-1 最終日インプレ数割合

本当に、今回の無名戦・A-1は最終日になるまで結果が分からなかった、ということを表していると思います。一方で、これまで自身が参加してきたBMSイベントのことを考えると、これは特に今回の無名戦・A-1に限ったことではなく、BMSイベントでいつも発生していることだと思います。なので、BMSイベントにおいて最終日前までの評価がいまいちでも、最終日には一気に逆転する可能性もあるので、終わるまでは悲観すべきではない、ということだと思います。

2. 全作品のランキング推移について

A-1、無名戦の全作品のランキング推移は以下の通りです。(ちょっと見づらいかも)

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無名戦 全作品順位推移
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A-1 全作品順位推移

※A-1についてはNot Air得点を考慮した表ではないので、実際の順位と少し違うかもしれません。

(1) 無名戦

無名戦に関しては、Gimme All The Cocaineが2日目からそのまま最後までぶっちぎり続けて優勝、2位のThrill Triggerも途中から何とかくらいついて健闘したものの一歩及ばず、といったところでしたが、1位と2位はインプレ数・得点からも次元の違うところで得点レースをしていた、という印象です。その次にWeaponhumanとSecret Orderが3位争いを続けて、5位以下はしばらく10作品くらいが接戦を繰り広げて、最終的には9位くらいまでの作品が5位争いをしていた、といった勢力図だったと思います。さらに、10位以内に入賞するとカブトムシを食べないといけない、という謎の噂が流れたりもして、一部では10位以内はカブトムシゾーンという通称で呼ばれていたりしましたが、残り一枠のカブトムシゾーンに入る争いも最終日まで5,6作品の間で行われていたと思います。(ここに関しては、10位以内に入賞したい、というより、表向きには避けたい、と言っている人もいたかな、と思います。まあカブトムシ食べる必要は全くないのですが。)

順位表の最終日の推移をみると、大幅に順位が上下した作品もあるようです。
順位があがった作品としては、上位陣では前日14位から順位を6つあげて見事カブトムシゾーンにも入り最終的に8位になったRAKUGAKI NOTE、19位から順位を9あげて同様にカブトムシゾーンの10位に入り込んだヤバヤバがあります。ともに、最終日まで高いAverageポイントを維持しており、(若干ヤバヤバは予想外でしたが)最終日に順位をあげるのは必然だった作品と言えると思います。

上位陣以外では、以下の作品が最終日に大幅に順位をあげています。

鏡花水月の宵 29位→21位 (+8)
devote 47位→27位 (+20)
Carnelian 39位→29位 (+10)
1st Code 62位→46位 (+16)
キボウノヒカリ(SC.Kanata Redecorate) 60位→53位(+7)

特にdevoteは最終日で20位も順位をあげており、ポテンシャルの高さを伺えます。元々、パッケージ化時点でB譜面しかなかったり、BGAも制作中だったりで、暫く経ってからそれらが揃ったこともあり、序盤は評価がふるわなかったものの、最終的には高く評価された、ということだと思います。それだけに、はじめから譜面やBGAが揃っていれば上位争いにも食い込んでいた可能性もあり、逆に惜しい作品とも言えます。

反対に最終日に大幅に順位を下げた作品は以下の通りです。

fwa fwa 15位→22位 (-7)
Opposit_Position 16位→24位 (-8)
KHAYAH 22位→32位 (-10)
ちっぴんばとる! 28位→37位 (-9)
指先忍者 the ultimate keystroke 27位→40位 (-13)
蒼く爽昧な夢のようで 31位→42位 (-11)
Flömade 44位→51位 (-7)
Morning Beach 49位→58位 (-8)
OhDa 50位→62位 (-12)

個人的には、上のどの作品も印象が強く、どれも今回の無名戦を彩る素晴らしい作品だと思っていますが、残念ながら最終日に他の作品の勢いに流されて順位が下がる結果となってしまったものだと思います。ただ、順位は順位であり、今回のイベントで多くのインプレが集まり、様々な意見やアドバイスを得られたものだと思いますが、そちらの方が重要だと思います。各作者様におかれましては、是非とも今回のインプレを糧にして次の作品につなげていって頂けたらな、と思います。(いや・・・自分どういう立場なんだ、すみません)

(2) A-1

A-1については、序盤はRedoとRemovalが1位を争っていたところに、ウタカタ・サマーメモリーズが争いに加わり、途中からRemovalが一歩前に出てトップを走る中で他2作品が追う形となっていたところ、終盤に向けて徐々に順位をあげていったSweet Magic Machineが最終日に物凄い追い上げを見せてRedoをおさえて3位に入り込むというサプライズが起こりました。優勝争いはRemovalとウタカタ・サマーメモリーズとの間で、最終日の最後の瞬間までどうなるかわからない得点レースを繰り広げ、最後にはウタカタ・サマーメモリーズの方に勝利の女神が微笑みました。

A-1と無名戦同時開催で、どうしても無名戦の方がイベント的に盛り上がり、票も無名戦の方に集中していたこともあり、上位作品以外はなかなか注目を集められない性質があったように思えますが、個々の作品をみていくと、上位作品でなくてもNot Airを意識した作品ばかりであり、面白い作品が豊富にあったと思います。

A-1については、意外にも最終日に大幅に順位を上下させた作品は少なかったようです。
順位が大幅に変わった作品は以下の通りです。
※Not Airポイントを考慮する前の順位です。

サクラノユメ。 18位→9位 (+9)
route#10 30位→22位 (+8)
comfy 32位→36位 (-4)
レフトビハインド 29位→34位 (-5)
Let Me G0 24位→28位 (-4)

無名戦程、最終日に順位の上下が全体的に少なかった理由はよくわかりませんが、A-1ということでどの作品もインパクトが強く、最終日になる前に各作品に多くの人が共通の認識をもっていたことで、最終日に大量のインプレが入っても各作品の評価が大幅に変わることはなかった、ということなのかもしれません。ただ、その中でも順位をあげた2作品はA-1の作品総数から考えても大幅なアップであり、それだけ光るものがあった、ということなのだと思います。

3. インプレ人数と内訳について

インプレ人数とその内訳については以下の通りです。

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無名戦・A-1 インプレ人数と内訳
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無名戦 インプレ人数構成割合
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A-1 インプレ人数構成割合

この表のそれぞれの用語は以下のように定義しています。


全インプレ人数:無名戦69作品中68作品以上、A-1 39作品中38作品以上インプレしているインプレイヤーの人数
通常インプレ人数:無名戦2作以上68作未満、A-1 2作以上38作品未満 インプレしているインプレイヤーの人数
ユニークインプレ人数:無名戦、A-1ともに1作のみインプレしているインプレイヤーの人数
※同一人物が別名義でインプレしている場合は別人として扱っています(同一人物かどうかわからないため)


無名戦、A-1ともに全インプレ人数は割と多めかな、と思います。

また、無名戦に関して、開催期間中にTwitterで以下のようなアンケートをとっています。サンプル数はあまり多くないので、若干信憑性に欠ける部分はあるかもしれないですが、参考にはできると思います。

これによると、特にイベント名を指定せずにアンケートをとった結果だと「一部の作品だけプレイ、インプレする」という回答が50%をしめて、「今回の無名戦」とイベントを限定すると「全曲プレイ、全曲インプレする」という回答が最大派になっていました。これは単に自身のTwitterフォロワーに無名戦参加者が多かったから、というだけかもしれませんが、無名戦、ということだと基本的には有名BMS作者は参加していないはずなので、有名作者のBMSだけプレイして後は放置する、といったスタイルにはなりにくく、各参加者に平等なチャンスが与えられているイベント、という性質は他のイベントよりも強いのかな、と思います。

ただ、今回の無名戦は例年よりも参加者が多く、大規模とまではいかなくてもそれなりの規模のイベントにはなったこともあるからか、結果的に全インプレ人数が占める割合は約2割、と上のアンケート結果よりも少ない割合になっています。それでも56人ものインプレイヤーが全インプレを行っており、全インプレ人数は多いと言えると思います。

A-1に関しては全インプレ率は無名戦よりもさらに多いようです。ただ、全インプレ人数は53人とほぼ無名戦と変わらず、A-1も無名戦と同時開催となっている影響からか、無名戦と同様に各参加者に平等なチャンスが与えられているイベントという性質が出ていると思います。

無名戦の全インプレ率の方が低い理由は、今回の無名戦の面白い性質が関係していると思います。それは、無名戦では、全インプレ率よりもユニークインプレ率の方が
高い、という点です。これについては少し面白いデータがあるので、あとで掘り下げます。

なお、無名戦、A-1両方とも全インプレを行っている方は以下の方です。一参加者としてしか言えませんが、イベントが盛り上がったのも多くの方がインプレに参加したからであり、自身も日々変わるインプレと得点に一喜一憂しながらおおいに楽しめたこともあり、特に全インプレを行った方々には改めて感謝を述べたいと思います。そして本当におつかれさまでした!

(敬称略)38k、69 de 74、⑮、Black、Chicala Lpis、Deadline Hater、Eltsopa、E-MAN、Exsy、hard、kairos22、kei_iwata、Khibine、kooridori、kunzite、last、LT、LUXURY♪、mots、NASA、nekomimi_STRaw、paraneumann、Phleguratone、Rb_Drache、saaa、sera、SOMON、STANK!、Sterrite、syuuroku、tcheb、tolz、utzbo、Whip、あとぅす、でぱみぃ、みーに、池田哲次、吟世かいな、くるやのぶ、しよ(複数別名義あり)、Setca.、ザラエル、はろるど

※繰り返しとなりますが、複数名義でインプレ投稿している場合は全インプレを行っていても上のリストに載っていない可能性もあります。また、譜面サポートや制作過程でアドバイスをしていたり等で一部作品へのインプレを自粛している中、他の作品へは全インプレしている方もいらっしゃるようで、そういった方は気づいたベースで追加していますが、おそらく全カバーはできていないと思います。もし他にも実は実質、全インプレ行っている方がいらっしゃれば、こっそり教えて頂ければシレっと更新します。(なお、追加している方は、データ上は通常インプレ勢のままにしていますので、ご了承ください。表や図を差し替えるの面倒なので・・・。

※なお、誰がどれだけどの作品にインプレしているかについての詳細は、少々見づらいですが統計データのインプレイヤー別集計のシートをご参照ください。

4. よりディープな考察

ここからはよりディープな考察をしていきます。

(1) 登録番号若い方がインプレ数稼げて有利?

今回の無名戦に参加していて、特にこの点は感じていました。データ面から裏取りをしてみたいと思います。

【確認方法】
 無名戦、A-1でそれぞれ前半、後半の作品で総インプレ数の平均を比較する。

【前提】
 無名戦:2~60の35作品を前半、61~112の34作品を後半に分ける。上位2作品は他作品より大幅にインプレ数が多いものの、前後半で分かれているためそのまま除外せずに計算に含める。

【計算結果】

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無名戦 インプレ数 平均・分散・標準偏差
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A-1 インプレ数 平均・分散・標準偏差

【考察】
無名戦、A-1ともに前半の方が後半よりもインプレ数の平均値が高くなっています。A-1については平均値のみの比較では然程変わらないように見えますが、分散、標準偏差を比べると後半の方が前半よりも高く、後半の方が数値のばらつきがある中での平均値となっていることが分かります。後半の作品を見ると、インプレ数のランキング1位と3位のウタカタ・サマーメモリーズとSWEET MAGIC MACHINEが含まれており、その上で前半よりも平均値が低く、各作品の得点のばらつきも後半の方が大きいことから、その分インプレ数が少ない作品が多く含まれていると言えると思います。

ということで、結論としては、予想通り、登録番号が若い方がインプレ数を稼ぐ面では有利と思われます。要因としては、インプレ期間開始前に登録されていることでより多くの人にプレイしてもらい、印象づけができることが大きいと思います。特に、序盤に登録するとイベント開始直後にBMS配信者による配信が行われる場合もあり、宣伝効果としてはなかなか大きいと思います。また、インプレイヤーもはじめの方に登録される作品からプレイしていってインプレしていく人の方が多く、他作品より序盤にインプレ数を稼ぎやすく、インプレ数があるからプレイしてみよう、と後になってやってくる人に思わせる等、好循環を生むことができるものと思います。

(2) 登録番号が中盤と終盤では終盤の方がインプレ数稼げる?

逆に終盤の登録番号の方が目立っていたり、後ろの作品からプレイしていってインプレしていく天邪鬼な方も少なからず存在するので、実は終盤の方が中盤よりも有利なのではないか、という説があり、これを検証してみたいと思います。

【確認方法】
 無名戦、A-1でそれぞれ前半、中盤、後半の作品で総インプレ数の平均を比較する。

【前提】
 無名戦:登録番号順に23作品ずつ、前半、中盤、後半に分ける。上位2作品は他作品より大幅にインプレ数が多く、全体傾向を確認する上ではノイズとなるため除外する。
 A-1:登録番号順に13作品ずつ、前半、中盤、後半に分ける。上位4作品は同様の理由で除外する。

【計算結果】

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無名戦 インプレ数 平均・分散・標準偏差
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A-1 インプレ数 平均・分散・標準偏差

【考察】
先ほどの考察の通り、序盤は中盤、終盤に比べて平均が高くなっています。中盤と終盤を比較すると、平均値は無名戦、A-1ともに多少終盤の方が高くなってはいるものの、あまり変わりはありません。分散、標準偏差は無名戦は終盤の方が高く、わずかに中盤の方が高い、といったところですが、明確な傾向はみられません。無名戦は終盤の平均値がわずかに高いものの分散・標準偏差もわずかに高く、一概に終盤が有利と言えるものでもないように思えます。A-1はむしろ平均値が終盤の方が高いものの、分散・標準偏差はわずかに低く、終盤のインプレ数のばらつきは少ないものの、わずかな差であり、同様に一概に終盤が有利と言えるものでもない、と思います。

なので、中盤と終盤ではあまり変わらない、といったところで、もしBMSイベントで序盤の登録を逃したら、じゃあ埋もれないようにするためにも終盤になるまで登録を待とう、というのはあまり意味がないように思えます。

(3) Average高いけどインプレ数稼げなかった作品は何が原因?

無名戦、A-1のAverage 9以上の作品は以下の通りです。

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無名戦 Average 9以上作品一覧
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A-1 Average9以上作品一覧

無名戦でいうと、Shadowland CityscapeとOpposite_Position、A-1でいうとSundial(BMS Edit)がAverage 9以上なのにインプレ数が少なめとなっています。Shadowland CityscapeとSundial(BMS Edit)は登録番号が後半ということが響いている可能性はありますが、Opposite_Positionは前半登録であり、番号順の問題だけではなさそうです。

それぞれ、分散・標準偏差は1付近であり、Average得点から考えれば高くはなく、安定して平均点付近に票が集まっており、安定して多くの人から高い評価を受けていた、と言えると思います。逆に言うと、あまり賛否両論が発生しない作品ということで、人によってものすごくぶっ刺さる、というような要素が薄く、あまりインプレ数は稼げなかった?ということも考えられますが、一概には言えないと思います。

一つありそうな要素としては、3作品とも開催期間中の作者さんのTwitterログを見ると、あまりTwitterで作品の宣伝は積極的には行っていなかったようです。単純に、あまり作品を知られずにプレイする人数自体が少な目だったのかも、ということでもう少し掘り下げて確認してみたいと思います。

上のAverage9以上の作品のLR2IRでののべプレイ数を確認すると、以下の通りでした。(データは2020/7/18に取得。数字は各譜面のプレイ人数です。)
※のべプレイ人数なので、例えば3譜面を同一プレイヤーがプレイした場合は3人と数えているので、実際のプレイ人数ではないことにご注意ください。またbeatoraja等他のプレイヤーでプレイしている人数は考慮していないので、あくまで目安です。

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無名戦 Average 9以上作品 プレイ人数 (LR2IRより)
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A-1 Average9以上作品 プレイ人数 (LR2IRより)

これを見ると、Shadowland CityscapeとSundial(BMS Edit)は明らかに他の作品に比べてプレイ人数が少ないことが見て取れます。やはり宣伝が十分にできていなかったことが原因でしょうか?一方で、Opposite_Positionはプレイ人数的には他作品と比較しても申し分のないプレイ人数となっています。プレイする人はたくさんいても、どういうわけかインプレ投稿にまでつながる人が少なかった、ということですが、これについてはよくわかりません。もしかすると、無名戦終わった後にたくさんプレイされるようになって、開催期間中はさほどプレイ人数が多くなかった、ということも考えられますが、実際どうなのかは不明です。ただ、インプレ投稿がなされるかどうかは、各人のインプレ投稿のタイミングや運等、色々な要素が絡んでくると思うので、たまたまこうなってしまうこともある、ということなのだと思います。「2.全作品のランキング推移について」でも触れたように、最終日にあまり票数が伸びなかったことも関係しているかもしれません。

以上から、多少不明な点はありつつも、少なくとも確実に言えることは、作品の宣伝はやるにこしたことはない、ということだと思います。

(4) 逆にAverageはトップクラスではないのにインプレ数稼いでいる作品の特徴とは?

反対に、Averageはトップクラスではないけど、他の同Average帯の作品よりもインプレ数を稼いでいる作品もあり、これらの作品が他と違ってどんな作品だったかを掘り下げていきたいと思います。

無名戦、A-1のAverage9点未満でインプレ数ランキングトップ10は以下の通りです。

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無名戦 Average 9未満 インプレ数 Top10
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A-1 Average 9未満 インプレ数 Top10

無名戦でいうとOR、Phoenix (ft.Tonishkov)、fwa fwa、re:CrystallizationがAverageの割にインプレ数を多く稼いでいるようです。A-1についてはAverage9点未満のインプレ数トップ10全てがAverageの割にインプレ数を稼いでいるように見えますが、特にその傾向が強いと思われる作品を網掛けしています。

無名戦の4作品については、インプレ評価を見ると、作品として独自の光る強い要素を持っている反面、ある部分では色々と指摘を受けていたり等、人によって評価が分かれている作品だと思います。分散と標準偏差が大きいほど、インプレ得点にばらつきが発生していることを表しており、特にこの値が大きい作品ほど賛否両論が発生していると言えると思います。分散と標準偏差はAverageが下がるほど基本的には大きくなるはずですが、Averageが全体から見ると比較的高めなのにこの値が高い場合は否定的な意見がある中でも絶賛されている意見も多い、ということが言えると思います。無名戦のこの4作品は上にリストアップしている10作品の中では分散・標準偏差が高めになっており、多様な意見が発生する要素を含んでいる、ということでインプレ数も多くなっているものと思われます。

A-1の作品についても網掛け作品は同様の傾向があると思われますが、紫電やソラハナは他作品と比較して分散・標準偏差はそこまで高いわけではなく、比較的安定した評価となっていると思います。それでもインプレ数を稼げているのは、単純に登録番号が若いから、という点が大きいと思われます。

無名戦、A-1作品で特にこのAverage帯の中でも分散・標準偏差が大きいのがORとSweet Magic Machineだと思います。この2作品は所謂、”普通の”BMSではないということで開催期間中多くの話題を呼んだ作品であり、データ面でもそれが読み取れるのが面白いです。

これらの作品もLR2IRでのべプレイ人数を確認してみたいと思います。(のべプレ人数と毎回いうのも微妙なので、以降、単にプレイ人数と言うようにします。)

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無名戦 Average 9未満 インプレ数 Top10作品 プレイ人数(LR2IRより)
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A-1 Average 9未満 インプレ数 Top10作品 プレイ人数(LR2IRより)

データは同じく2020/7/18に取得したものです。これを見ると、OR、Sweet Magic Machine、Redoはあからさまにプレイ人数が多く、インプレ数が多いのは自然な流れと思われます。特にORは複数の譜面にそれぞれ違う要素を入れていて、一人が複数譜面をプレイしている可能性が高く、Sweet Magic Machineは謎解きの要素もあり、(このデータからは読み取れませんが)、プレイ人数というよりもプレイ回数が断トツに多くなっており、それぞれインプレにつながっているものと思われます。ただ、それ以外の作品については網掛け作品とそうでない作品でプレイ人数の相関があるわけではなく、網掛け作品でもプレイ人数が少ない作品があったり(ソラハナ、Newcomer(BMS))、逆に非網掛け作品でプレイ人数が多い作品もあります(Funky Anthem "F"、なんかたのしいことないかな)。ヤバヤバは実はあまりプレイ人数が多くないにも関わらず、分散・標準偏差もあまり高くなく、あまり賛否両論なく安定した評価を得ながら、インプレ数も多く獲得しているところが面白いです。これは何よりも作品のインパクトが強く、インブレ数の伸びにつながっているものと思われます。

まとめると、Averageがトップクラスでなくてもインプレ数を稼ぐ作品の特徴としては、以下があると考えられます。
・作品として独自の光る要素がある反面、ある部分では色々と指摘を受けていたり等、人によって評価の分かれる作品。
・作品のインパクトが強く、独自の世界観や作品のコンセプトが明確に打ち出されていて、何度もプレイさせる力があったり、話題を呼ぶ作品。
・なんだかんだでやっぱり登録番号が若い作品。

(5) Averageの推移傾向について

以下、また見づらいですが無名戦、A-1全作品のAverageの推移です。

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無名戦 全作品 Average 推移
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A-1 全作品 Average 推移

全体的にAverageは序盤で激しく動き、中盤から終盤にかけて収束していっていることが見て取れます。全体的な傾向として、終盤に向けて上位の作品はAverageはちょっとずつ下げていき、下位の作品は逆にちょっとずつAverageをあげていっている傾向があると思います。これは、例えばAverageが9点以上の上位作品の場合は、10点の評価以外はすべてAverageが下がることにつながるため、自然と下がっていきやすく、逆にAverageが低い作品は1回の10点評価でも一気にAverageが引き上げられ、インプレ数が増えるにつれて自然とあがっていく、ということだと思います。そんな中でも、終盤に向けて大幅にAverageが上昇している作品もあり、そういった作品の特徴としては以下があるように思えます。

・たまたま序盤に低めの評価が続いたが、後半に向かって高評価する人が増えて結果的に評価高くなった
・序盤に譜面やBGAがそろっていなくて評価が低めだったが、揃ったところで評価が高まった

これらの作品は基本的には最終日に順位があがっていると思います。

(6) 全体インプレ勢、通常インプレ勢、ユニークインプレ勢の各作品のインプレ数、得点が占める割合はどれくらいだったか

改めて、各インプレイヤーをインプレした作品数によって「全インプレ勢」「通常インプレ勢」「ユニークインプレ勢」に分けて、各作品のインプレ数、得点について、どれくらいの割合がそれぞれのインプレ勢によるものかも調べてみました。全インプレ勢、通常インプレ勢、ユニークインプレ勢の定義については、「3. インプレ人数と内訳について」で定義した「全インプレ人数」、「通常インプレ人数」、「ユニークインプレ人数」と同じ定義をします。

全インプレ勢:無名戦69作品中68作品以上、A-1 39作品中38作品以上インプレしているインプレイヤー
通常インプレ勢:無名戦2作以上68作未満、A-1 2作以上38作品未満 インプレしているインプレイヤー
ユニークイン勢:無名戦、A-1ともに1作のみインプレしているインプレイヤー
※同一人物が別名義でインプレしている場合は別人として扱っています(同一人物かどうかわからないため)

以下、無名戦、A-1の各作品のインプレ数の内訳と得点の内訳を示したものです。

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無名戦 作品別インプレ構成集計
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無名戦 作品別 インプレ得点構成集計
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A-1 作品別 インプレ構成集計
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A-1 作品別 インプレ得点構成集計

これらの結果からみてもわかるように、全体インプレ勢の得点は、インプレの母数は全作品変わらない、ということで、得点は流石に1位と最下位を比較すると違いは出ていますが、全作品でそこまで大きな差は出ていません。上位作品は通常インプレ勢、ユニークインプレ勢の票を多く獲得し、高得点につながっていることが分かると思います。全インプレ勢の中には相対評価で1~10の評価を満遍なく行っている人もいましたが、直接的な総得点の順位への影響は大きくなく、いかに通常インプレ勢とユニークインプレ勢の票を獲得できたかが高得点につながるポイントだったということが分かると思います。

一方で、では相対評価で低い評価を受けても全く問題なかったかというと、本当に最終的な総得点にあまり影響がなかったとも言い切れないと思います。評価によりAverageは確実に下がるため、あとの人が評点を考える上で少なからずAverageは参考にしている可能性もあり、相対評価での低評価は地味に後の得点に響いている可能性はあると思います。下がったAverageを目安に評価をつけられてさらにAverageが下がる、というような悪循環に陥っているケースもあると考えられ、序盤に相対評価による低評価を受けて以後の展開が苦しくなった作品もあるように思えます。結局は、BMS作品は音楽、映像、譜面全てが揃って総合的に評価されることから、すべての面で万人に隙のない作品を出していくことが意外と重要、ということが言えるのかな、と思います。

ここで、ユニークインプレ勢の票について注目したいと思います。以下、無名戦、A-1の作品でユニークインプレ勢によるインプレ数を2以上獲得した全作品です。

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無名戦 ユニークインプレ 2以上獲得作品
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A-1 ユニークインプレ 2以上獲得作品

無名戦については、「3. インプレ人数と内訳について」で触れたように、全インプレ勢よりもユニークインプレ勢の方が多い、ということが起こっていましたが、ユニークインプレ数全体87のうち、27が1位のGimme All The Cocaine、24が2位のThrill Trigger、7が4位のSecret Orderについていて、残りの作品のユニークインプレ獲得数は2まで、となっています。3位のWeaponhumanは意外にもユニークインプレは0で、裏をかえせば贔屓するインプレイヤーの助力なしでこの順位を獲得しており、まさに万人を唸らせた作品、と言うこともできると思います。一方で、A-1の方は順当に上位作品が自然な形でユニークインプレを獲得している、と言えると思います。

さて、皆さんはこのデータを見てどう思いますか?たくさんある無名戦のユニークインプレは、大部分が上位2作品が獲得したものでした。ユニークインプレというのは文字通り、1作品にしか投票していない人のインプレのことであり、例えばGimme All The CocaineとThrill Triggerの両方にインプレを行った時点で、それはユニークインプレではなくなります。そんなユニークインプレが2作品に20以上もついていることは、少し異常な事態だということは少し考えれば分かると思います。

この結果について、色々と邪推しそうになりますが、一つ言えることは、両作品とも、それぞれ全く別の方向性で魅力を発揮しており、おそらく全く別のファン層を作っていると思われる、ということです。BMSイベントにおいて、上位に入賞するには、Averageで評価されるイベントでない限り、総得点をいかに伸ばすかが重要となります。となると、当然インプレを多く獲得する作品が有利なのですが、この獲得の仕方として一つ有効な方法があると思います。それは「信者を作る」ということです。(実際にはもっと手っ取り早い方法も考えられますが、ここでは触れないでおきます・・・)

作品や作者の作風として、少し尖った方向に振り切って、その作風にぶっ刺さる人に向けて作品を作り続け、固定のファン、つまり信者を作り、増やしていく。その上で、新たな作品をイベント向けに出したら、そういったファンをインプレ会場にどんどん引き込み、インプレ数を伸ばしていく。特にBOFのような大規模イベントでは、おそらく全インプレ勢も少なくなるため、こういう方法でインプレ数を稼ぐ作品が強く、結果的に有名作者の作品が高い順位に行く、という構図だと思います。(いや、違うかもしれないけど)

無名戦は、無名作者のBMSイベントなので、基本的にはこの方法は取りえないはずですが、上位2作品は、作者が意識しているか意識していないかに関わらず、結果的に似たような方法でインプレ票の獲得を実現してしまっている、ということだと思います。冒頭で、「次元の違うところで得点レースをしていた、という印象」と述べましたが、言いたかったことはまさにこういったことです。(当然不正行為がなかったことが前提ですが)無名戦でこの次元で勝負されたら、ちょっと敵いようがないな、というのが正直な印象です。そういうこともあり、上位2作品を送り出したFutamiさんとK4Y5さんにおかれては、無名17世代を代表して今後のBMSイベントでも大活躍に期待したいです。ということで、
まずはカブトムシを食べるところからはじめてみましょうか。

4.おわりに

めちゃくちゃ長くなりましたが、無名戦・A-1の統計データから振り返りと、様々な切り口での考察を行ってみました。この考察も、決して正しいことを言っているわけではないと思うので、ここに書かれていることに惑わされず、参考にすべき情報は参考にして、ご自身でいろいろと考えてみると面白いかと思います。
また、冒頭で述べたように、「2.統計データ」に置いているExcel表には、この考察で触れていない様々なデータもあるので、さらに興味があれば見てみると面白いかもしれません。

以上となりますが、ここまで閲覧くださり誠にありがとうございました。