motzの雑記帳

主にBMS関連の話題について不定期に語ります

無名戦17 参加曲 Trooping the Colourの解説②~BGAについて(2020/07/04)

①に引き続き、以前wixの個人サイトに掲載した記事の移植です。

なお、解説対象のBGA(動画)はこちらです。
BGAのみ→https://www.youtube.com/watch?v=nbaH3dGGi9g&t=11s
beatorajaでのAuto Play動画→https://www.youtube.com/watch?v=XVqTTeur52M 
※音はbeatorajaのAutoPlay動画の方が良いです
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どうもー。motsです。

2020/7/4現在開催中の「第17回自称無名BMS作家が物申す! 」イベントも明日がインプレ期間最終日でいよいよ大詰めです。一応、2回に分けて書くと宣言していた作品解説を開催期間中に終わらせておかないと、と思い、再び記事を投稿します。

今回はBGAについての解説です。といっても、正直この作品のBGA、解説しないといけない程のレベルのものでもないかもしれないです。昨今のBMSBGAは本当にレベルが高いと思います。凄い映像だなぁと思ったら実際にプロのCGクリエイターさんがかなり時間をかけて作っていたものだったり、プロでなくてもそれぞれの作者さんまたは映像作家さん達が持てる技術を総動員して作品の世界を全力で映像表現していて、こういった作品を見ると本当に言葉が出なくなります。BGA界隈の昨今のこのレベルの高さは、本当に凄くて素晴らしいな、と思う反面、多くの人にとってBGAを自作するハードルをあげているような気もしてしまっています。結構、BGAも作り始めたら案外楽しかったりもするので、せっかくBMSを自作しているのに、失敗しても自己責任の範囲に留まるBGA制作の機会を自ら放棄するのもちょっと勿体ない気もしています。

私自身、絵心は全然ありません。大学時代は建築学科で、在学中はそれなりに建物のデッサンとかパース図を描いたりとかはしていたものの、例えば想像だけで絵を描けと言われたら普通に所謂"画伯絵"になります。映像制作の経験もほぼなく、知識もほぼありません。ということで、今回の記事の狙いですが、そんな絵心も知識もない人間でも、こういう方法をとればこの程度のBGAなら作れるよ、ということを解説することで、少しでもBGA制作のハードルが下げられたらと思っています。なので、BGAの解説、というよりもどのように作っていったのかや、どういうことを考えてBGAを作っていったかの解説になると思います。

​前置きはこれくらいにして本題に入ります。

1.映像のコンセプトについて

曲のテーマはTrooping the Colourというロンドンで実際にある祝典です。なので、実際のTrooping the Colourの写真や映像をふんだんに使って、祝典の雰囲気を伝えたいと思いました。曲のテーマとしては第1回の解説の通り「勇ましさ」と「規律」なので、それも何らかの形で表現できればと思いました。

2.素材集め

前述の通り、絵心はないので自分で何か絵を描くのはNGです。なので、できる限り題材となる写真や映像を集めました。ネットで映像を集めようとすると著作権の問題がついて回ります。そこで目をつけたのが米YAHOO!が運営するflickrという写真共有サービスです。このサービス、個々人が撮った写真や動画を公開しているのですが、それぞれの写真や動画に撮影者が利用ライセンスを決めて公開しており、中には再加工・再配布可能なものもあります。また、基本的には利用は無料です。細かい条件を見ると、パブリックドメインとして完全に著作権を放棄しているものもあれば、非営利目的でクレジット表記すればなら再加工・再配布可能だったり等、様々です。ということで、まずはBGA制作の素材集めとして、このflickrでTrooping the Colour関連の写真や動画、また、舞台となるロンドンの写真や動画を片っ端から集めました。また、過去に自身が撮ったTrooping the Colourの写真や動画も掘り出し、それも素材としました。

3.素材加工

動画や写真をそのまま作品に使おうとすると、サイズがバラバラで使いづらかったり、そもそも動画なんかは余計な映像も入っていたり(衛兵が広場で行進している手前でホームビデオで動画撮影しているおじさんが映っていたり、その横を子供が遊んでいたり等…)していたので、動画で必要な個所をクロッピングしたり、映像・写真サイズもbeatorajaで扱える1280x720 pixelに調整しなおしたり等をしました。ここで使用したソフトウェアは、写真の加工にはWindows標準搭載のペイント、動画の加工にはVideo Procというソフトを使っています。半年前にクリスマスプレゼントキャンペーンか何かで、運よくこれの有料版のライセンスを無料で手に入れることができたので、それ以来愛用しています。動画のフォーマット変換等の処理も速く、結構使えるソフトだと思います。一通り集めた写真と動画の必要な部分の抜き出しとサイズ統一を行ったところで、動画制作に入りました。

4.動画編集ソフト探し

一通り素材が集まり、素材を利用しやすいように加工ができたところで、動画制作に入るのですが、動画制作には編集ソフトが必要になります。以前はWindows Movie MakerがWindowsに標準搭載されていたので、本当はそれを使いたかったのですが、今はなくなっているみたいだったので代わりのソフトウェアを探しました。色々と無料のものを試したものの、動作が不安定だったり、微妙にやりたいことができなかったりで中々良いソフトが見つからなかったのですが、色々試した挙句、BeeCutというソフトに行き着きました。写真や動画を感覚的な操作でつなげ合わせたり、エフェクトをかけたり、再生速度を変えたり、まさにやりたいことができるソフトで、使い勝手が良かったです。無料のまま使っても良かったかもしれないですが、ロゴを消すひと手間が面倒そうだったり、有料版なら高解像度の動画出力もできるようだったので、普通に有料版購入しました。映像制作用に、他にもResolumeの無料版とかも導入済で、これ使って映像ミキシングも試みましたが、今回扱っているのが実写映像だからということもあるからか、あまり良い感じにはならず、結局Resolumeは使用せず、BeeCutだけで作っています。

5.映像制作

ここまでは準備編で、ここからが実際の映像制作です。動画だけだと、ある程度BPMに合った動画再生速度で再生すると、集めた素材だけでは曲尺は埋まらなそうだったので、要所要所で集めた写真を使って映像の尺を埋める必要がありました。BeeCutに曲のWavファイルを配置し、イントロ、Aメロ、Bメロ…と区切って各パートごとに場面に合いそうな写真・動画をあてていきました。

1)イントロ

曲の解説でもお伝えしていた通り、まずは掴みが必要だと思いました。ロンドンの有名建築や日常風景、Trooping the Colourの一場面をスネアロールに合わせてあらゆる方向から規則的に写真を一瞬でスライド表示させることで、視覚的な刺激を演出しました。自分なりの理論ですが、BMSをプレイしながらBGAはじっくり見ることはできないので、刺激を与えるなら多少視覚的にうるさいくらいが丁度良いと思っています。そして、スネアロールに合わせた写真の畳みかけを挟みながら、"Royal Anniversary" (王の記念日)、"from the 17th century" (17世紀より)と、videzeey より入手したabstract系の映像を背景に表示させ、盛り上げるとともに曲のテーマを伝えています。そして、Trooping the Colourの一場面の写真を次々と表示し、BeeCutのエフェクト"Bad TV"で激しく映像を歪ませながらジャンルと曲名を表示させ、プレイしながらも視界の脇で目を引き、作品に引き込ませることを意識しました。その後、一瞬だけBMSBGA作者名を表示させた後、Trooping the Colourの場面場面の写真を曲の展開に合わせて、多少ゆっくり目に一枚一枚エフェクトをかけながら表示し、これからはじまる大規模な軍旗行進の予感をさせる演出をしています。

2)Aメロ(小→中規模編成)

Aメロに入ってすぐ、正面からみた靡いているイギリス国旗の動画を2倍速で表示させています。このイギリス国旗の動画はvidezeeyより入手したものです。イントロからの視覚的な変化を演出することと、Trooping the Colourの幕開けを演出するために旗を劇の幕に見立てて盛り上げようとしています。クラリネットソロが奏で始めるところでTrooping the Colourの解説文章を流しています。これは全く読んでもらうことを想定はしていないですが、一応、オートプレイとかで動画を見る場合には速読すれば何とか読める速度にはしています。曲のフレーズごとに次の文章を表示し、曲との同期を図っています。文章はTrooping the Colourのwiki等の解説サイトから引用しています。クラリネットソロが終わってもう一度楽器を増やしてメロディを繰り返すところでは、幕を開くような切り替わり効果とともに軍旗行進の映像を表示させています。この段階でもまだ曲の解説が続いているので、歴史ある古いセレモニーに対する解説をしていることがより強調されるように、BeeCutのエフェクトの"Old Video"にして古い白黒テレビ風の映像に変えています。なお、このBGAの中で兵隊が行進している映像はすべてmotsによる自撮りです。5-6年くらい前にTrooping the Colourを実際に見に行った時に撮ったものです。

3)Bメロ(中→大規模編成)

場面を展開し、広場で兵隊の部隊が隊列をなして行進していく映像を曲のBPMに合うように再生速度を調整して流しています。ここは特に、曲と映像が同期することを意識して映像を当て込んでいます。BeeCutのChromatic Aberrationというエフェクトをかけて敢えて映像をちらつかせて、ちらつきが曲のリズムと合うようにしたり、雲が流れるタイミングを曲のフレーズの切れ目と合わせたり等は意識的にやっているものです。

4)Aメロ(大規模編成)

ここで、曲の解説でも記載していますが、「レッド・アローズ」を登場させています。で、このレッド・アローズの映像、再配布・再加工可能なものはあまり画質の良いものがなかったです。ただ、どうしてもレッド・アローズは使いたかったので、画質多少悪いですが使っています。画質の悪さをごまかす意味も込めて、ここでも同じくChromatic Abberationでちらつかせ、曲との同期も図っています。また、木管の駆け上がり、駆け下りが交差するところがはじめて出てくるところで、レッド・アローズがユニオンジャックの色を表す三色の煙を放出するところと丁度同期するように映像再生箇所・速度を調節しています。

5)Cメロ(静)

曲解説でも説明した通り、ここではどちらかというと、場面としてはこれまでの軍旗行進や儀礼飛行から切り替わり、イギリス王室の華やかな様子を表現することを想定していた箇所ですが、エリザベス女王だとかを登場させてしまうと肖像権の問題がありそうだったので、ユニオンジャックがはためいている動画を使っています。この動画もvidezeeyより入手したものです。

6) Dメロ(静から動へ徐々に盛り上げ)

はじめはつなぎとしてロンドンの有名建築の写真を回転させながら表示させています。ここにはあまり深い意味はありません‥。今考えたらもう少しここはどうにかできたような気もします。ただ、最後のMIND THE GAPはロンドンを象徴するフレーズということもあり、少しでも印象に残るように写真の最後に持って行っています。ちなみに話脱線しますが、MIND THE GAPというのは本家にも同名の曲があることを最近知ったのですが、このフレーズはロンドンの地下鉄で電車が発車するタイミングで必ずアナウンスされるもので、「電車とホームの間の隙間にご注意ください」と注意喚起するものです。割と独特な言い回しだからなのか、結構ロンドンでは名物フレーズになっているようで、事あるごとに色んな人がスピーチや随筆等で引用しているような気がします。この作品の隠し譜面にもMIND THE GAPという曲変更差分譜面があるので、興味があればやってみてください。
…と大分脱線しましたが、解説の続きです。その後は、ロングトーンの音階を徐々にあげて盛り上げていく箇所ですが、再びレッド・アローズの別動画を使っています。特にこちらの映像はさらに画質が悪かったので、逆に古めかしさを演出するために"Old Video"エフェクトを使って白黒テレビ風にした上で、3色の煙を放出するタイミングでカラーに戻すことで過去から現在に戻し、そして未来に伝統を繋げていくことを、レッド・アローズが彼方に飛び去っていく様子を映して表現しています。

7) Aメロ(大規模編成+α)

Aメロへの回帰は再び兵隊の行進の動画ですが、冒頭のものとは別の動画です。曲の盛り上がり具合と同期させるために、冒頭よりも再生速度を速めています。ここではBeeCutの"Glitch"というエフェクトを曲のリズムと同期させながらかけて、力強さやより一層の勇ましさを演出しています。

8) エンディング

エンディングでは、これまで使用した広場の行進、レッド・アローズ、ユニオン・ジャックの映像を順に速度をはやめながら再生することで、走馬灯のように映るように演出し、最後にもう一度 "WIND ORCHESTRA Trooping the Colour"と曲名をドーンと表示させて印象づけを試みました。

6.まとめ

以上が映像制作の解説です。特に意識したのは、イントロでの掴み、曲と映像の同期、またいかに曲で表現したかった点を限られた素材を活用して映像に落とし込むか、という点です。振り返ると、はじめに表現しようと決めていた「勇ましさ」と「規律」を意識的に表現を試みた部分は、あまりなかったかもしれないです。ただ、これらは、そもそも兵隊が行進している映像そのものから感じ取れるもののような気もするので、個人的には結果的にはOKということにしています。

…と、こんな感じで作っていったわけですが、出来上がったものは、映像作品としてみると目にやさしくない忙しない映像になっていると思います。ただこれも、解説中に述べたように、BGAって結局、プレイしながらはじっくり見ることができないし、多少刺激が強いくらいが丁度良いのかな、という自分なりの理論の元で出来上がったもの、と捉えて頂ければな、と思います…。


またしても、長々とした説明となってしまいました。2回に分けて、曲、BGAとこの作品を解説させて頂きましたが、これらの解説を読んだ後、もう一度本作品をプレイ頂いた際に、新たな発見や感動を得て頂けるようであれば、本当に作者冥利につきます。

最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!


※作品やってみて、感銘受けたことや、お前何言ってんだよ、といった文句、目に余ったこと等何でもあれば、無名戦の開催期間は2020/7/5まであるようなので、それまでに是非インプレ投稿をお願いします…!貴重なご意見お待ちしています。

​無名戦会場 No.9 Trooping the Colour
http://manbow.nothing.sh/event/event.cgi?action=More_def&num=9&event=131